※注)(邦題)は、MSI発売(CD番号MSIF2194)の表記に準じています。
発売日: 1969 8
LP / UK: Liberty LBS83257, US: Imperial LP-12445 (A-6 "Ready Mades" insted "I'm The Urban Spaceman)
再発盤については下記参照
CD / UK: Cornology (The Outro), Four Bonzo Dog Originals, US (CA): One Way S21-17431 (US Listing) JP: MSI MSIF2194

SIDE 1

SIDE 2

1 Hunting Tigers out in "India"
(Hargreaves/Damerell/Evans)
(インドの虎狩り)

2 Shirt (Spear/Bron)
(シャツ)

3 Tubas in the Moonlight (Spear/Bron)
(月影のチューバ)

4 Dr. Jazz (Oliver/Melrose/Darewski)
(ドクター・ジャズ)

5 Monster Mash (Pickett/Capizzi/T.M. Music)
(モンスター・マッシュ)

6 I'm the Urban Spaceman (Innes/Bron)
(おいらは町の宇宙飛行士)

1 Ali baba's Camel (Gay/Francis Day & Hunter)
(アリババズ・キャメル)

2 Laughing Blues (Bradley)
(ラーフィング・ブルース)

3 By a Waterfall (Kahal Fain/Feldman)
(滝のそばで)

4 Mr. Apollo (Stanshall/Innes/Bron)
(ミスター・アポロ)

5 Canyons of Your Mind (Stanshall/Bron)
(君の心の峡谷で)

写真撮影: ブレイリー・ウェンツェル
ジャケット・デザイン: ヴィヴィアン・スタンシャル、イアン・ブッチャー
プロデュース: ガス・ダッジョン 録音: トライデント・スタジオ
"ライノ"ロドニー・スレイターは"The Beano"のあたたかい賛同を得て参加


インサート (表)

インサート (裏)

ライナーノート

ハーヴィー・J・サタン教授

Q : ボンゾ・ドッグのアルバムなんだけども、ボンゾ・ドッグのアルバムでないものは?
A : 『タッドポール』のこと!

 ちょっと、これは分かりにくいかな?説明すると

 さて、Do Not Adjust Your Set』の制作者たちは、『I'm The Urban Spaceman』が「ヒット」ソングになった時、突然ボンゾズに大きく注目しだした。 アツく盛り上がった彼らは、ショーのサウンドトラック・アルバムを発売すると決定したのだ!
もちろん、ボンゾズに登場願って、このサントラ企画に他の「ヒット曲」を録音してもらおうということになった。 問題は、ボンゾズが精力的にツアーを行っていたため、次作アルバム用に取りかかっていた曲の準備さえも充分にできていない状態だったことだ。
(それにまた、彼らは『I'm The Urban Spaceman』のフォローアップをねらって、シングル『Mr. Apollo"/"Ready Mades』を急遽発売したところだった。)

 解決策は? ショーで使われた素材のなかでも、とりわけ未発表だったものをリマスターすることになった。 ボンゾズは、通常はカバーものだったが多くの曲を録音しており、 ライブ・ショーでは口パク(当時は、きわめて普通に行われていた)で合わせられるようになっていた。 それで、当コレクションの楽曲は、 『Do Not Adjust Your Set"』からの曲、+『I'm The Urban Spaceman』のシングル、+ボンゾの最新シングル『Mr. Apollo』に、 どこかのテープ箱に眠っていた古いボンゾの曲が1曲ということになる。

 形式 そのものはボンゾみたいなこのアルバムだが、普段の全体を縫いつなげるような要素が欠けている。 ボンゾズのメンバー自身が本アルバムを、実際のボンゾのアルバムとみなしたことがないのも、このためかもしれない。

 それでは解説に入ろう

1 : 私たちの旅は『Hunting Tigers Out In INDIAH』から始まる。英国とインド統治時代を題材にしたすばらしくおマヌケな楽曲。 ちょっとサイケデリック入ってます。(間抜けなハンターはロジャー・ラスキン-スピアーとヴィヴィアン・スタンシャル。) 次は、ヴィヴィアンが人々にシャツについてインタビューし、ロジャーが自作曲を披露するが、 このタイトルがちょうど折よく『Shirt!(電子シャツの衿によるロジャーのソロが入っている!) Tubas In The Moonlight』もロジャーがしたためた作品ボンゾズが触発された元の曲を良くしのばせる出来だ。 ほんとうに良いチューバソロ!こんなことを言える曲は、そうざらにはなかろう? 次はインストゥルメンタルの『Dr.Jazz』で、初期ボンゾの録音とかなり似た傾向のもの。 驚異的なほど多様な種類の楽器が、この曲全体を通して使用されている! 次、影から立ちのぼって来たのは、『Monster Mash』。 このカバー・バージョンはたぶん、ボンゾたちがカバーしたなかでは最も「最近の」曲に入る! (オリジナルは、ボビー・"ボリス"・ピケットが50年代にレコーディングしたもの。) ヴィヴィアンは歌詞を少しだけ変える衝動をおさえ切れず、オリジナルのテレビ・バージョンでは、 サム・スプーンが「怪物」として登場し、電子スプーンを演奏している! この面は『I'm The Urban Spacemanボンゾズのビッグヒットその他あーだこーだと言われていますが (分かった。これはほんとうにいい曲だ、が、しかし、この点に関してここまでで、必要以上に議論を尽くしたと思う。)

2 : いっぽう、砂漠に話題を戻すとAli Baba's Camel』から冒険が始まるが、たしかに駱駝もくせ者に違いない! 素晴らしく馬鹿らしくコミカルな曲でボンゾズのパフォーマンスが、まるで目に見えるようだ。 (ヴィヴィアンの声は、もうちょっとでサー・ローリンソン!) 次のLaughing Blues』は、ボンゾのほんとうの「オールディーズ」で、彼らが1966年にパーロフォン(Parlophone)のセッション中に録音したもの。 保存状態は聴いて分かるようにあまり良くないが、オリジナルのボンゾがどんな音だったかをうかがわせる。 『By A Waterfall』はジャネット・マクドナルドとネルソン・エディーのヒットで、ここではヴィヴィアンの諷刺のサカナにされている。 (カナダ騎馬警官隊の恰好はしていない。)この曲は『Do Not Adjust Your Set』で人気を集め、 聴衆がレスポンスの歌詞をすべて歌って返したので、バンドはえらく驚いた! この時点でボンゾはエレクトリック・バンド化していて、ヘヴィー・メタルのワザも仕込んでいたため、ここで登場するのが『Mr. Apollo! 絶対的に笑わしてくれるボディー・ビルディング讃歌だ! I'm The Urban Spaceman』と同じくらいビッグ・ヒットになるはずだったのだがあぁしかし、そうはいかなかった! 驚異的なグラム・ロック・サウンド!お祭り騒ぎを締めくくるのは、永年にわたって傑作B面の座を保っている『Canyons Of Your Mind。 ヴィヴィアンがまたもやエルヴィスへの熱い想いをブチ撒けてくれる!非常に人気のあった曲で、ボンゾたちは数回のショーで演奏したことがある。 極めて悲痛なギターソロは、全部ニール叫んでいる彼のファン役はロジャー!

脚注 : 当アルバムはバンドメンバーから一度も真剣にボンゾのアルバムとみなされたことがないが、バンドを全体的に見渡すために良い材料が揃っている。 彼らの最も初期の作品、ヒット・ソング、彼らのジャズ・サウンド、彼らのロック・サウンド、スケッチのお馬鹿な使用法が入っている。 曲を単にごたごたと並べてあるだけにしては、悪くない出来だ!

これまでの得点結果 : ヒット・シングルの波に乗って絶好調のボンゾたちは2回のアメリカツアー (不運なことに、ずさんなマーケティングのせいで、あまり成功とは言えなかった。 ツアーした大部分の都市では、彼らのアルバムがまだ販売されていなかったのだ!) を含めてツアー続行中、数多くのテレビ・ラジオ出演、『Do Not Adjust Your Set』での在職期間を終えて、次のアルバム用の曲を作る時間ができた。

 そして、これからの長旅は妙な方向へと進んでゆき、狭い道をたどって道標が前方に現れ、きらめいた稲光の下に、たった一語だけが目に入った。『ケインシャム』!

細かい情報 :

発売時期 :

19698月 タイトル "Tadpoles" グループ名 The Bonzo Dog Band  
(
ジャケット外側は型抜き、ヴィヴィアンの目などが印刷されたインサート付き)

Liberty Records (英国盤) - LBS-83257

19698月 タイトル "Tadpoles" グループ名 The Bonzo Dog Band  
(
ジャケット外側は型抜き、内袋は片面印刷。『Do Not Adjust Your Set』に関する記述はなし。)

Imperial Records (アメリカ盤) LP-12445

再発時期 :

1975年 タイトル "I'm The Urban Spaceman" グループ名 The Bonzo Dog Band
(付属物なし)

Sunset Records (英国) - SLS50350
 (
別のジャケット・デザイン。ボンゾたちが横断歩道に座っている写真背景は宇宙空間!)

1986年 タイトル "Tadpoles" グループ名 The Bonzo Dog Band.  
(
初期イシューはオリジナルのジャケットと同仕様、後期は型抜きはなし、内袋は片面印刷)

Edsel Records (英国) - XED186

1993年 タイトル "Tadpoles" グループ名 The Bonzo Dog Band (付属物なし)

One Way Records (米国) S21-17431

シングル盤 : "Mr. Apollo" / "Ready Mades" - 1969 - Liberty Records LBF-15201

A
面は、チャールズ・アトラスの通販ボディービルディング器具を使ってるような連中に、素晴らしくお馬鹿な攻撃を与える曲。
B面は60年代末、イギリスのアート・シーンを素晴らしくシュールリアルに扱った曲。

Mr. Apollo』はその後、シングル盤としてドイツ語でも録音され、ヴィヴィアンのシャウトにはおあつらえ向きだったようだ!
Ready Mades』は『エレナー・リグビー』のパロディーではないかという意見が多く出されたが、 私はどちらかというと反対意見で、これはニールの人生に対する風変わりな観方を単に示している、ほんとうに良い曲だと思う。

クレジットに名前が登場するバンドメンバー : なし

クレジットに名前が登場しないミュージシャン : ヴィヴィアン・スタンシャル、ニール・イネス、"レッグス"ラリー・スミス、ロジャー・ラスキン-スピアー、ロドニー・スレイター
デニス・コーワン、ジョエル・ドラックマン、デイブ・クレイグ、サム・スプーンズ、ヴァーノン・ダドリー・ボヘイ・ノウェル
(Laughing Blues』では氏名不詳のボンゾもプレイしている。)

なぜミュージシャンのクレジットがないのか? : 単純に、どの曲で誰が演奏していたか、誰もはっきりとは知らなかったからだ。 曲によっては『Do Not Adjust Your Set』の放映スケジュールに間に合わせるため、かなりの短時間でやっつけたものもあり、 構成メンバーがつねに変動し続けたために、どの曲で誰が演奏しているのか特定できなくなってしまったのだ。 これを最も良くあらわしている例は『Monster Mash』で、 放映されたバージョンではヴァーノン・ダドリー・ボヘイ・ノウェルがベースを弾いているのがはっきり写っている。 しかし、ジョン・ピールのラジオ番組のために録音されたバージョンもあり、これに加えて、本アルバムに登場するバージョンは以上の2つとも違うものだ。 事情をもっとややこしくしているのは、デイブ・クレイグとジョエル・ドラックマンが両人とも、 この曲の一バージョンでベースを弾いた記憶を持っていることだ。 ここまで来れば混乱してきたかな?もう一つの問題は、『Laughing Blues』で、録音当時にはもっとボンゾのメンバーが多かったのだが、 バンド自身でさえも誰が誰だか憶えてなかったのだ!


関知されなかったミュージシャン : 本アルバムは、ジョエル・ドラックマンとデイブ・クレイグが貢献した曲を含む、 ボンゾのオリジナル・アルバムとしては最後のものとなった。

新しいおニイちゃんの登場 : 当アルバムは、デニス・コーワンがベース・ギターで貢献した初の作品を含んでいる。 (ボンゾの最後のベースマン!)

ジャケット! : 幸運にもオリジナルのビニール盤で本アルバムを入手できた場合、ほんとにお馬鹿なお楽しみが待っている。ジャケットの表には穴がパンチであけてあり、 インサート(アメリカ盤は片面だけ印刷してある内袋)を外に出すときに、バンドメンバーの眼が動いて、穴の中を小さな絵が通り過ぎるようになっている。

ジャケット表は: (左から): ”レッグスラリー、ヴィヴィアン、ニール
ジャケット裏は: (左から): デニス、ロジャー、ロドニー

このアルバムに入らなかった曲 : ボンゾズがコンサートその他のライブ・パフォーマンスで演奏していた曲には以下の曲が含まれていた。 『We're Going To Bring It On Home』、『Tent』、『Sofa Head』、『Give Booze A Chance』、『Busted』、 『National Beer(この曲は後に『King of Scurf』になる。)、『Joke Shop Man』、 『Boiled Ham Rhumba(この曲は後にニールの『Innes Book of Records』アルバム中の『The Cat Meat Conga』になる。)、 『What Do You Do?』、『Quiet Talks』、『On A Wonderful Day』、『Look At Me I'm Wonderful』。

アメリカ人ってやつは! : おっしゃる通り、またまたアメリカの衰えた感覚は、 イギリスで出たバージョンをそのまま受け入れるわけにはいかなかった。 彼らはすでに『I'm The Urban Spaceman』を聴いてしまっていたのだ、さてどうしようというわけで、 アメリカで発売されたアルバムでは『Ready Mades(イギリスの視聴者はシングルで買っていたもの)と置き換えられた。

ビートルズってやつは! : Give Booze A Chance(ジョン・レノンの『平和を我らに』のパロディー)がラジオから流れ出したのはこの頃だが、 これはもともと『Sofa Head』という曲の一部分だった。 誰がジョンで誰がヨーコ役なのかは分かりづらいがヴィヴィアンがジョンで、ニールがヨーコのように聴こえる。 どちらにしても、ニールが初めてビートル・パロディーに手を染めたのがこの曲だ。

済みません、あなた方のドラマーをちょっと拝借できませんか? : ボンゾズはかなり精力的なツアーを1968年から1969年の間に行っており… 2回のアメリカ・ツアーも含めライブ時はかなり混乱した様相になっていたため、"レッグス"はドラム・キットの後ろにじっとしている代わりに、 ステージ上をうろつき回るようになっていた。ボンゾたちは数人のドラマーを拝借してきて「代役」とした。 (代役にされたドラマーには、ジム・キャパルディ、エインズレー・ダンバーが含まれていた。)

亀裂が見え始めてきた : この時点で、ツアーの苛酷さは消耗を極めるものとなってきており、 これほど極度な肉体的疲労のもとではボンゾズがすぐに解散してしまうというヴィヴィアンの発言が何度となく伝えられていた。

その名前って何?: Tadpoles(おたまじゃくし)というタイトルについて一度も説明を受けたことはないが、 すぐに以下の点に思い当たることだろう。 おたまじゃくしが完全に成長したカエルではないのと同様、これらが完全な成長を遂げた楽曲ではないため、『Tadpoles』と名付けられたのではないだろうか?



日本語訳/湯田 賢司