ハーヴィー・J・サタン教授(Prof. Harvey J. Satan) |
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ようこそ シリーズ2枚目のアルバムへ。
『ゴリラ』のヴォードビル・スタイルの後で、ファンがこのアルバムをどう思ったかは推察するしかない。
でも『We Are Normal』を聴いた反応には、次の2つがあったんじゃないだろうか?
まず、「ゲッ、間違ってフランク・ザッパのレコードを買ってしまった」。
もう一つは、「何だこりゃ、どっからこんなにエレクトリック楽器が出てきたんだ?」。
(そしてジャケットと添付ブックレットを見ると、可笑しいとともに、もっと謎が深まることうけあいだ!) さて シュールレアリスム、ダダ、古典文学、そして今ここにサイケデリアが登場し、 ボンゾズは好調にカッ飛ばしていた! よりヘヴィーなロックサウンドは不用意に針を落としたリスナーを驚かせたかもしれないが、 加速度的に狂喜の度を増していく『Do Not Adjust Your Set』の異様なナンバーを観ていた視聴者にとっては、お待ちかねの内容だったのではないか。 本アルバムと、『ケインシャム』の両アルバムは、ボンゾズにとってある種の形式を設定したように思う。 数々の音楽スタイル、音楽上の実験、そしてあの手この手で登場する茶化しが全ての要素を縫い合わせているのだ。 それほど分かりやすいストレートな「コンセプト」や「物語り」というわけではなく、 どちらかというとシュールリアルなお話しが展開されるなか、バンドがいつもナレーターを務めるとは限らないという形式だ。 まず 景気良くオープニングを飾るのは、先ほども触れた『We Are Normal』、 「正常な人って誰?」というシンプルな疑問を問い掛けている。そして実際のところ、もしリスナーが正常でないとしたら、 その代わりウサギ頭をした男が正常そのものだとしたら?この曲は驚異的なインストゥルメンタルのジャムに突入してゆくが、 これは主として「俺たちは楽器をアンプにつないだぞ!」という宣言になっている。 (また、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの「Great & Secret Show」 注) この部分は調べが行き届きませんでした。ELPファンの方の、お力添えをお待ちしております。ぜひ、以下のアドレスまで情報提供をお願いします。(訳者のメール) を触発することになったのかもしれない。) 『Postcards』は美しいパロディー曲で、主題は何を隠そう、休日に決まってるじゃん! ニールとヴィヴィアンのボーカルによるインタープレイが楽しい。(乱調な語りはまたしてもヴィヴィアン。) 『Beautiful Zelda』はサイエンス・フィクションと異星人侵略者、そして愛の異質性を謳ったニールの作品。 『Can Blue Men Sing The Whites』は、ブルーズを歌うためにわざと貧しげな服装をしなければならない、金持ち白人シンガーたちの恐怖に対して、 切れ味鋭く怒りをぶちまけている。 賞賛に値する奴らへの、眼ん玉グリグリの鮮やかなコミック攻撃だ! 『Hello Mabel』はニール作の素敵なえせレトロ曲で、「懐かしの」ボンゾ・サウンドのファンすべてを満足させるための作品。 ここではヴィヴィアンが歌っているが、ライブではたまにニールが歌うこともあった。 『Humanoid Boogie』は、ヘヴィー・メタル・バンドと化したボンゾズだ!フラワー・パワー入ってるところもあるが、場所によっては本当にでかい音! ニールのお気に入り曲で、ソロとして3つ以上の別バージョンをこれまでに録音している! 『Kama Sutra』…。えーっ、これは…ゴクリ…どう言ったもんだろうか? おかしな小品で、カーマ・スートラと、60年代のガール・グループたち両方に賞讃を送っている。(ってぐらいにしておこうか。) 第2面 は『Trouser Press』からスタートする。 ここで、ついに、ヴィヴィアンとニール以外の誰かが曲を作ることになる! この曲の作曲とリード・ボーカルの大部分はロジャー・ラスキン-スピアーだ。 胸のありったけを絞り出したドライ・クリーニング業界に寄せる抒情詩。(ソウル・ミュージックへの屈折した一撃もバシッと。) 「手を叩こう」と誘っているのはジョエル・ドラックマンだ。 次は、私が個人的に一番気に入っている曲で、『My Pink Half Of The Drainpipe』。 はた迷惑な隣人たちに関する不条理なコミック・オペレッタだ!(『ボヘミアン・ラプソディー』のオープニングはこんな感じじゃなかったろうか?) 素晴らしく珍妙な楽器と声のコレクションで、ヴィヴィアンとロドニー・スレイターがボーカル! 『Rockaliser Baby』が次の曲だが、これはまたまた休日とバイクの暴走族連中、そしてテディー・ボーイズ、警察の手入れについて歌ったロック・ソングだ。 ボーンマスに遠出すれば見られる典型的な光景。(とっても良いアコーディオン・ソロが入っていることは言ったかな?) 『Rhinocratic Oaths』はヴィヴィアン・スタンシャルだけがブン廻すことのできる、ねじくれた説話だ。 (あの「パーシー・ローリンソン」に言及していることに注意。 …また、『ゴリラ』に登場した「トロンボーンを吹くローリンソンたち」を思い起こすこともできるかもしれない。テーマ?脈々とつながる糸?強迫観念?) 聴き返すごとにこの曲の可笑しさが増えるのは、リスナーが物語りの特異な性格をもっと良く聴き取れるようになるからだ。 アルバムを締めくくるのは、ブックエンドとして完璧な曲で、これもまた同じくらい奇妙な、『11 Moustachioed Daughters』だ。 ブードゥーの儀式か?それとも脱毛器具か何かのコマーシャルか?いやそれとも空き時間を埋めるためか? 私たちが本当のところを知ることは決してないかもしれない…。ボンゾズの曲のなかで最も長い曲の一つだということは確かだ。 (ヴィヴィアンは後に彼のバンド「biGGrunt」でこの曲を復活させ、ロジャー・ラスキン-スピアーとデニス・コーワンの賛助を受け、 適切なコスチュームその他とともにテレビで演奏した。) さて このアルバムを出しただけじゃまだ足りないと言わんばかりに… 我らがおニイちゃん方は当時、彼ら最大のヒット曲を世に送り出すことになった! このシングル曲『I'm The Urban Spaceman(おいらは町の宇宙飛行士)』(ポール・マッカートニーから小さな助けがあった)はついに、 眠ってたヤツらにもボンゾズを気付かせることになったのだ! 裏面は、同じくらい愛くるしい『Canyons Of Your Mind』! (ヴィヴィアンのもう一つのプレスリー讃歌!) これまでの得点結果 : 人気テレビ番組に毎週出演、ザ・フー(The Who)やクリーム(Cream)といったバンドの前座、そして今度はヒット・シングル! 我らがカエルちゃんたちは今、王子様になった…しかしすぐに…彼らはおたまじゃくし『Tadpoles』に逆戻りしてしまうのだった!が、それは続きということで…。
細かい情報:
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日本語訳/湯田 賢司